SET DESIGN et cetera 「浅さと広さと深さ」

2017.11.30


空間と名のつく仕事なら何でも手を出す。
ってことは、3次元のものなら何でもやるってことですが…、ただし資格が必要なもの、例えば本建築は無理です。(笑)
そのジャンルは限りなく広いから、結果的には浅く広くって状況にはなるんだけど、興味の幅はあればあるだけ良いと思う。
 
現代美術館で見たインスタレーションがバラエティ番組の参考になったり、京都を歩いた時に見た街並みが舞台の一幕を飾ったり、ドラマのセットで作ったカフェの室内構成が実際の内装仕事に役立ったり、様々なものがリンクしてくることも多く、浅く広くとは書いたが、単純に物事が終わっていくようなことではないから面白いんだ。
 
ある時に関わった店舗内装の仕事で、一番最初に現地調査したビル内の状態が、自分的にツボなことがあって、どこかでそのアイディアを使いたいと思っていた。
 
そして、それが具体的にカタチになったのは、今年の1月より関西テレビでO.Aになった、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』というドラマの1セット。

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これは物語上のメインセットである特捜班のオフィス。
オフィスったって、何だこのやりっぱなしは…って感じになってるんだけど、それには当然訳があります。当たり前だけど(笑)。
 
物語はフィクションであるため、どういった線引きでリアリティを出すかはその時の状況(監督の考え方やロケ先の都合などなど)で変わってくるんだけど、自分達デザイナーは設定に合わせて、リアルとファンタジーを融合させるバランサーみたいな役割なんだと思う(自分の考えです)。

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このドラマの設定で、特捜班は隠密扱いなので、警察の中にオフィスはなく、一般企業を偽装して通常のオフィスビルにあることになっている。
台本には、ガランとしたオフィスに各自の机が5つ好き勝手に置かれてる、と書かれており、文面通りのプランニングしてしまえば、白い壁のオフィス内にアイボリーのデスクを置いて終了…。
ただ、もちろんそれでは芸が無さすぎで、いくらト書きでガランとあっても、映像である以上切り取られた画面内に世界観ができてなければ、とても退屈なものになってしまう。
退屈とドラマのリアリティは全く別物なので、ここはちゃんと線引きするのが自分の仕事。

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まずは、そのト書きを自分なりに解釈して、特捜班の成り立ちからオフィスに繋がるものを連想ゲームしていく。
急編成されたチーム、隠密のために日常に紛れる(泥棒の服装はスーツが一番)、アジトは簡単に乗り替えられる、電脳化のしやすい環境、といった感じで。
そしてセットである以上…カッコ良く、照明当てやすく、撮りやすく、なんてのも秤に乗せ、プランニングしたものを監督にブツけてみる。
それでのってくれるかは自分のプレゼン次第ではあるんだけど、ここで以前ツボったアイディアが生きてくることになる。
 
ビルのテナントから出る時は、現状復帰が必要になるため、作られていた内装は一度ひっぺがされ、ビル本体の躯体が露出してくる。
間仕切りにしてた壁の石膏ボードが剥がされ、軽量鉄骨がむき出しになる。
その中にはLANケーブルや電源コードなどが収められているため、露出してくることになる。
 
この状態で彼らが入居することで、設定上の様々な思いを結実することができると踏み、それを具現化できるよう図面に落とし込んでいく。

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その結果がリアルとファンタジーの融合となる。
 
ビルのOAフロアって、床下に配線が通るように鉄骨やプラで台上げしてるんで、それを引っぺがすとコンクリの躯体が出てくるんだけど、実際はずっと蓋がされてる状態だから、こんなに汚れてる訳はなく、台上げしてる足の跡も付いてたりとか、これがリアルかって言うと本当はリアルではない。
でも重要なのはそこではなく、演者がこの中で芝居をした時にハマるかどうかが結果リアルに繋がることになる。

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観る人によっちゃ、このセットは解体現場そのものでしかないんだけど、
その中で行われている非現実感が物語のスパイスになってると自分は信じて、あの時のあの現場を思い出し、構成している。

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躯体のコンクリート、軽量鉄骨、塗装されたり無塗装の石膏ボード、配線・配管、壁紙…。
無垢的素材のオンパレード。(ホームセンター好きってのがよく現れてるかも…)
構造的に嘘な部分も沢山あるんだけど、それは前述の通りリアルに見えるようコントロールした結果。
もちろん予算的な側面も否定できない(笑)が、まあそれはどんなものも一緒の話しだけど。

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浅く広くを追求していると、いつのまにか深い連鎖にハマっている自分に気付くが、考えてる時間が楽しいって改めて思うから、こりゃ幸せな話しなんだろうな~。

 これから年末年始の繁忙期に入る、別所晃吉でした。
年明け1月31日からの「空間をみせる図面展」に遊びに来てください。


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