設計デザイン部

SET DESIGN et cetera 「蓄積」

2017.08.17


設計デザイン部の別所です。

日常様々な状況を見て回し、空間デザインへのヒントにしてゆく。
見てれば何でも作れるようになる訳じゃないけど、確実に役には立つ。
自分は学生時代からNYが好きで、チョイチョイ旅行しちゃ、先日アップしたような写真を撮っていたりした。
それから10ウン年経って入ってきた仕事…。

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キャラクターは著作権の問題があるから消してありますが、長らくNHKで英語の番組として放送されていたアメリカ発信のやつ。
それがテレビ東京へ放映権が移った時に、セットデザイナーとして日本版を作るということで関わることになった。

ディレクターと打ち合わせした後、その世界観をプランニングしてゆく。
条件は一つで、アメリカ版のメインモチーフを一箇所入れること。
デザインとして見た目NYらしさは当たり前で、それとは別にスタジオセットとして大事なのは、演技のしやすさ、撮影のしやすさ、
更に日本のテレビ撮影事情から、セットの建てやすさ、バラしやすさは絶対条件。

 それらを満たすプランを構築し、上記のようなスケッチと・・・

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こんな平面図を持って、再度ディレクターと打ち合わせする。

この番組の場合、アメリカ本国のディレクター兼デザイナーとも打ち合わせする必要があったために渡米することになったけど、もともと旅行好きだったから、そんな機会もまた楽し。
その打ち合わせ自体は15分で終わっちゃって、どうしようと思ったけど…(笑)。

それからスケッチを実現化する為の図面描きをし、大道具、装飾(小道具)、アクリル装飾、電飾、特殊効果などの各専門会社へ発注する。

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こんな感じの図面を描くんだ。
自分たちの業界が特殊なのは、未だに尺貫法を使っていること。
一間(1,818mm)、一尺(303mm)、一寸(30,3mm)
因みに上の図面の方眼は1マス1尺…もちろん文房具屋さんでは売ってません。

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人の大きさに合わせ、この番組ならではのマペット(人形)との関係性、
それらが一緒に演技する為に必要な隠蔽スペースなどを数値化して伝えるのが図面の目的。

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NYで見てきたあの風景・光景にストーリーとキャラクターをのっけて考える。
実際に見たものをそのまま作るのだったら簡単だけど、それじゃあ意味がない。
自分たちデザイナーは、自分のフィルターを通してモノを表現しないとね。

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実際スタジオという大きさの限られた箱の中に入れ込む世界だから、遠近法も積極的に使い構成してゆく。
と言っても、具体的にどのくらいの遠近感を持たせるかは、まったく感覚勝負で、人に聞かれても答えられない自分がもどかしい(笑)。
「the 経験値」

これはまだ図面の一部なんだけど、実際にセットとして完成したものはというと…

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こんな感じ。
リアルとファンタジーの中間を狙った色使いとエイジング。
キャラクターの色が引き立つようにセットは若干ダーク目になっている。

先に書いた日本のTV撮影事情なんだけど、この規模のセットを一晩で建て、撮影を3日ほど、そして一晩でバラさなくてはいけないから、いくら工場でベースを作ってきているとはいえ、効率的にやっていかないと成立しないんで随所にノウハウが詰まっている。
それを全部書こうとすると一冊の本になっちゃいそうだから、今回はやめときますが…(

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遠近法の感じ分かりますかね?
演技上で人が行かない路地は、レンガを小さく、窓も小さくなります。
小道具として吊り下げてある洗濯物は、幼児用の小さいもの。

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ここに並んでいる3軒の建物は、それぞれにキャスターで動くようになってます。
反対面で撮影する時はカメラスペースを広げる為に下げたりとか、一軒引っ込めたり、90度回転させることで、路地を作ったりする役目を果たすんです。

奥に置いてあるポスト、ちょっと昔の日本的なものなんですけど、実際NYにあったものを模してます。
NYの街並みで日本の子供達がわかる話しをやらなきゃいけない時に、アメリカの青いポストとか日本に存在しないものばっか出てきたら、たとえセットとしての世界観がよく出来ていても混乱するばかりで、理解することができないんじゃないか?
そんな疑問を持ってNYの街中を歩いてたら、あったんです、こんなのが。
これだったら日本人が見ても『ポスト』です。

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もと小劇場(オフオフブロードウェイくらい?)だったとこが、今はコミュニティスペースになってる設定にしました。

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公園前の路地はアメリカ定番(?)のバスケゴール。
樽、クロスのかかったテーブル、マペット演者が隠れるスペースです。
テーブルなんかは天板下から手を出せるよう穴が開いてたりして、その使用時は穴開きクロスにかけかえます。

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こういったフロアも毎回敷き直すものなので、クッションシートというフロア材を形状に切って、それぞれの柄が塡め合うようになっている。 よーく見るとテープで貼ってあるのが分かるでしょ(笑) 

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マンホールもデータ出力で作ったもの。 因みにアメリカ本国のセットは日本のように建てバラしをしないので、床は全部コンクリートベースに絵で描いてあります。 セットって、元々スタジオの床はフラットすぎて『それらしさ』が出辛いのですが、わざわざアンジュレーション(起伏)を作ることは、時間・費用的に現実的ではないので毎回悩まされるんですが、この時はちょっとだけヒラメキました。 NYで散歩してる時に足元を見てたら気がついた! 道端につきまくってるガムの痕…。 本物をくっつける訳にいかないんで、あれを出力シールにして貼り付けようと(笑)。 結構これがタッチになって良い感じになりました…たかがガム、されどガム。

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NYでは建物の正面に目隠しされたゴミ置場が併設されてることが多い。 もちろんこれも隠れるのには最適。

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花壇もウッドデッキもベンチも全て中空使用で、穴の開いた板別出しで差し替えです。
青いベンチの座面下、ウッドデッキ寸法も合わせると人が屈んで入れそうでしょ。

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こういう鉄骨梁も、本来斜めに吊る必要はないんですが、左のレンガ壁が可動するために、そのままじゃ保てないので、嘘でもそれらしい感じで成立させてます。

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2階建てセットの裏側…これがキモです。 いちいち2階建を組んでたら前述の建て込み時間では間に合わないんで、先に2階部分をスタジオの昇降バトンで吊り上げちゃいます。 それから1階部分を建てる。 こうすることで照明さんも仕込み易くなるのと、この隙間がテラス的な見栄えになるため、セット空間が立体的に見えてくるというオマケ付き。

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こういう様々なマジックで空間が成り立ってる訳です。 

最初に戻りますが、色んなことを見ておく知っておくことで、様々なヒントが結実していくから面白いんだなぁ。