デザイン部

SET DESIGN et cetera 「世界観」

2019.12.25


お久しぶりです。デザイン部の別所です。

TVドラマでも映画でも演劇でも、大概は台本が先にあり、それに沿ったシチュエーションを、様々なスタッフが演出家の意向に沿い肉付けしてゆく。
自分が勝手に何でも作ってよい訳でないのは当たり前だけど、だからと言って自分の意見・アイディアを通せないんだったら、関わる意味も無し…。

演出、撮影(演劇においては無し)、照明、音声、装飾などなど様々な部署と折衝しながら、自分のやりたいこととのバランスを形に置き換えていくんだけど、モノを作る以上は当然予算も密接に関わってくるんで見積もりを取って、作るとこは作り、削るとこは削る、なんてことも必要だったりして。

だから、色んな要素が絡み過ぎて、思い通りに行くことなんてほぼ無いんだけど、大事なことは最終的に良いモノを作っていくことなんで、諦めず色んな方法論にチャレンジをして、最善のゴールを目指せればそれが最高。

そうしたチャレンジの結果に出てくるものが『世界観』というもの。

ここは香港。
最高の夜景や、混沌とした街並み、美味しいご飯…色んな楽しみが味わえる。

この仕事をしてると本当いろんな場所に行くし、様々な経験に出会える。
もちろん楽しい事ばかりじゃないけどね(笑)。
この香港へ行ったのは、今年中頃に公開された映画『コンフィデンスマンJP』の仕事の為。
時期は去年の夏前だったかな…たぶん。

どんなドラマや映画でも、海外シチュエーションだからって全てがそこでロケをされてるかっていうと、そこは役者さんのスケジュールや製作予算、そこでは撮れない制約事項などもあり、日本で海外を再現したりとかすることも多い。
だから、ロケハンに行ったら写真を沢山撮ったりなど、とにかく資料を集めるのが重要なんだよね。

例えば、ここは福生の方にある小さな商店街。
ロケスケジュール上、ここに香港の路地を再現しなくてはいけない。

でも実際の香港はこんな感じの相当なヨゴシ感(これはまだ整然としてる方)。

日本でここまでの建物を見つけるのは中々至難の技なもんで、そこは上手い事やっていくしかない。

香港の路地では、こんな感じのビニールシートを軒に使われていることが多いので、これは一つのアイコンとなってくる。

で、先ほどの商店街に飾りを入れ込んでみる。
これではまだ整然としすぎなんだけど、ここに人や食べ物、煙や照明で生活感を足し、生きた世界観を作っていく。

テーブルに食べかす、セイロには水蒸気…様々な要素でごちゃごちゃになってなっていくから、撮影現場はカオスで、そりゃもう大変(笑)。

ここは八王子のとある場所にある元レストランのロケ地。
ここを役に合わせた邸宅に変えていきます。
ちょっと怪しい雰囲気にしていきたいんだけど、邪魔なのは目を剥くくらい強烈なピンクの壁と、センターの中途半端な樹木…。

つーことで、まずピンクの壁はパネルでカバーをし落ち着いた雰囲気を作っていきます。

金のストリングスカーテンの向こうには玉座があり、その向かって右側はグリーンルームとして混沌感を出す。
中途半端なグリーンは、隠すのではなく敢えて足すことで存在を変えることにした。

これまた別部屋なんだけど、何とも中途半端なギリシャ柱が立ち塞がる。

なので雰囲気を変えたモノで周りを囲むことで、逆にアイコンとしてしまった。

そしてメインセットとなる定宿の設定場所はこんな集合住宅。
実に香港っぽい設定。

でも、ただ団地っぽいものを作ったって面白くも何とも無いから、ここは詐欺師の面々が生きるようなアジトを作らなきゃいけない。

そこで考えたのが2フロアぶち抜きのメゾネット。
ロケマッチである上記のような建物で、こんなリフォームができないのは承知の上。
ドラマの質を考えていくと、真面目に現実を作り込むのが吉と出る訳ではなく、違和感がない程度に夢を描いた方が、逆にリアルに見えてくることもある。

蒸し暑い香港において扇風機はマストアイテム。
もちろんエアコンは付いてるけど、扇風機を入れ込むことで視覚的に温度が見えてくる。

エレベーターホールから見た施設のドア2枚。
これは、本当に香港の雑居ビル内にこんな感じの場所があったんだ。

芝居場所に立体感をつける為の急勾配階段。
これがあることで、階段の抜けた奥からも横からも上からも人が入ってこれるんで、画面の様々な方向からの動きがつけられる。

そしてどうしてもやりたかったのが、この座り。
自分が座っちゃってる写真だけど(笑)、主役の性格を考えると絶対この位置に来るだろうなってシチュエーションが見えたんで、予算上や様々な制約を工面してでも必要だなと。

足をプラプラさせてる下で扇風機が首を振る、そのユルーイ感じ。

そんなト書き、台本にはない。

でも必要。

たかだかワンカットであったとしても、そこに世界観を見出せるなら、やる意味があるんだよね。
セットを作ることが重要ではなくって、自分たちは空間をもって物語を作るんだから。